40歳からの免疫力アップで健康長寿を!

この対談について

からだも心も何となく不調……、東洋医学で「未病」と呼ばれるこの状態は、40歳以降に目立ちます。不調の原因は意外にも腸に……。昨今、日本でも注目されている「腸」の健康について、EF-2001乳酸菌を研究する金沢大学特任教授の只野武先生と、患者さんに乳酸菌サプリメントを処方している三番町ごきげんクリニック院長の澤登雅一先生に対談していただきました。

体を外敵から守る免疫力40歳前後から右肩下がりで低下

只野:日本国内で70年ぶりにデング熱が発生するなど、私たちは絶えず感染症と向き合って生活しているわけですが、やはり免疫力の高い人は病気になりにくいですね。

澤登:ええ、それはクリニックで実際に患者さんを診ていて、実感としてありますね。免疫力が高いと、体内に侵入しようとする菌やウイルスを口・鼻・喉などの粘膜でやっつけることができる。あるいは、症状があらわれても軽症ですみます。感染症以外の病気、たとえば、癌も免疫力が高いと、癌細胞の増殖が抑えられますから。

只野:でも、免疫力は40歳前後から右肩下がりで低下する。検査を受けると数値は正常だけれども、病気の前段階の「未病」の人は6000万人もいると推計されています。

澤登:未病の状態を放っておくと、病気になってしまいます。ですから健康長寿を望むのであれば、未病の段階で何かしら手を打っておくべきだと思いますね。

肌荒れ、偏頭痛……、未病に多い腸内環境の悪化


澤登:
健康診断で異常がないのに偏頭痛がある、肌の状態が悪いといった不調を訴える方は、おしなべて腸内環境がよくありません。

只野:肌のトラブルというのは、やはりアレルギーやアトピーの方ですか?

澤登:はい。アトピーが一番多く、肌荒れや乾燥肌の方も、調べてみると腸内環境がよくありません。

只野:私はアレルギークリニックの先生と共同研究を行っているのですが、アトピーやアレルギーは、腸内にカンジダ菌という悪玉菌が増えて腸の粘膜部分で炎症が起こることが原因だといわれています。ですからカンジタ菌を取り除かなければ根本治療にはならない。ところが、多くの皮膚科はその場しのぎの対症療法しか行わないのが現状のようですね。

澤登:私は、関節リウマチや甲状腺などの自己免疫疾患も腸の病気だと思っています。ただ、自己免疫疾患の場合は、免疫が自分の細胞や組織に対して過剰に反応して攻撃することで起こるので、免疫力は高ければ高いほどよいと一概にはいえません。むしろ、「免疫調節がしっかりしている」といったほうが適切なのかもしれません。

只野:そして、その免疫調節に腸が関わっている。

澤登:はい、そのとおりです。

腸内環境は便のにおい、長さ、太さ、色、量、回数、硬さでチェックする

只野:ところで、澤登先生は患者さんの腸内環境をどのように調べているのですか?

澤登:クリニックに来られた方には、必ず便の状態を尋ねています。

只野:状態というのは?

澤登:長さ、太さ、色、におい、量、回数、硬さなどです。ほとんどの方は、便秘や下痢がなければ腸は健康だと思っていますが、細かくチェックすると、不健康な便ということが多々あります。なかには、1日に何度も出るし、下痢ではないから快便だと思っている方もいるのですが、回数が多いことは、腸内環境がよくないサインのひとつです。体調が悪いときは、まず、便を観察したほうがいいですね。

只野:たしかに、腸内環境が悪いときの便はものすごく臭いですからねえ。腸内環境がよいと、便は漬け物のような酸っぱいにおいで、悪臭を放っていない。色も茶色か黄金色くらいが理想ですが、腸内環境が悪いときは黒っぽかったり、白っぽかったりします。

澤登:腸内環境がよいときの便は弱酸性と言われています。これに対して腐臭のする便はpHが高く、アルカリ性に傾いています。腸内を弱酸性に保つことが、腸の健康、ひいては体全体の健康に重要だと思います。

善玉菌・悪玉菌・日和見菌3種類で100兆個が腸内に生息

只野:腸内細菌はビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌、ウエルシュ菌やブドウ球菌、大腸菌などの悪玉菌、そのどちらでもない日和見菌に大別されます。日和見菌というのは、健康なときには悪さをしませんが、免疫力が低下しているなど体調が悪くなると悪玉菌のようになる。具体的には連鎖球菌やバクテロイデスといった菌ですが、一部の大腸菌も日和見菌に分類されます。これらをすべてあわせると数百種類、100兆個にもおよぶといわれています。人体の細胞の数はおよそ60兆個ですから、それよりはるかに多い細菌と共生していることになるのですね。

澤登:腸内では、多くの細菌が複雑な生態系を築いています。この細菌の集まった様子を花畑にたとえて、「腸内フローラ」と呼んでいます。腸内フローラは小腸と大腸に存在し、腸内細菌の総重量は1.5kgにもなります。もっとも大きな臓器である肝臓が1.2kgくらいですから、腸内細菌は一大臓器といえるかもしれません。余談になりますが、大腸の炎症性疾患に対する最先端の治療は、便移植なんですよ。

只野:昨年オランダの研究チームが論文を発表しましたね。

澤登:ええ、日本でも特定の腸疾患に対して臨床試験が始まりました。内視鏡を使って、腸内細菌のバランスのよい人の便を移植します。もしかすると、すごく健康な人は、自分の便が商品になる時代がくるかもしれませんね(笑)。

健康寿命を延ばすには善玉菌を増やして腸内環境を整える

只野:腸内環境が悪いときは、悪玉菌が増えているわけですが、赤ちゃんの腸内は善玉のビフィズス菌が非常に多い。ところが年齢とともに徐々に減り、逆に、悪玉のウエルシュ菌が増えていきます。そして、中年以降は右肩上がりで増えはじめる。これは、未病のひとが増加する時期と一致する。未病の状態が病気の予備軍だということを自覚して、健康に気をつける人と、そのまま放置する人がいますけれども、意識の違いが、将来の健康状態の分かれ目になるのでしょうね。

澤登:健康寿命を延ばすためには「栄養」が重要です。腸の状態がよくなければ、きちんと栄養が吸収できない。つまり、すべてが腸につながるということですね。

只野:いまの日本人は、善玉菌を増やす食物繊維の摂取量が減っていますし、腸内細菌を殺してしまう抗生剤や消炎鎮痛剤を服用する機会も多い。便移植という究極の治療を受ける前に、食生活を改善したり、善玉菌をサプリメントでとったり積極的に腸内環境を整えたいですね。

澤登:善玉菌は、食べたものをエネルギーに換えるときに必要なビタミンB2のほか、ビオチン、ビタミンKなどを腸内でつくりだします。ビタミンは体の調子を整えるために欠かせない栄養素ですから、善玉菌が多いというのは腸内環境の改善だけにとどまらず、栄養面でもプラスの効果がある。「私食べても太らないんです」というひとがいますが、うらやましい反面、栄養の吸収が悪いということですから、心配になってしまいますね(笑)。

腸内環境を整える乳酸菌生きた菌vs死んでいる菌

澤登:只野先生は乳酸菌の研究をはじめられてどのくらいになりますか?

只野:8年です。EF-2001という乳酸菌について調べてほしいと依頼を受けたのがきっかけです。もともとは認知症、うつ、不安障害など脳の研究が専門です。脳と腸は相関しており、腸内環境を整えるはたらきがある乳酸菌の研究は、自分の専門領域とも関連していました。ですが、本格的に実験をしてみると、予想以上におもしろい結果が出たのです。ひとくちに乳酸菌といいましても、何種類もあるわけですが、なかでもEF-2001乳酸菌は非常に興味深いですね。

澤登:プロバイオティクス、プレバイオティクス、バイオジェニックスという分類でいえば、EF-2001乳酸菌はバイオジェニックスですね?

只野:はい。プロバイオティクスは、ヨーグルトや漬け物などに含まれている乳酸菌やビフィズス菌など、生きた菌のことをいいます。しかし、そのほとんどは胃酸で分解されて、腸内フローラに定着しません。

澤登:菌の数でいうなら、サプリメントのほうが圧倒的に多くとれますよね。

只野:免疫細胞を活性化して免疫力を維持するためには最低でも1兆個は必要といわれています。ですから、ヨーグルトなど一般的な食品中に含まれている億単位の数ではぜんぜん足りません。

澤登:プレバイオティクスはどうですか?

只野:プレバイオティクスは、オリゴ糖や食物繊維などをいい、善玉菌を増やすはたらきがあります。これは、積極的にとったほうがいいですね。バイオジェニックスは、EF-2001乳酸菌の菌体成分、ポリフェノールで知られる植物フラボノイド、免疫強化物質を含む生理活性ペプチドなどの食品成分のことを指します。これは東京大学名誉教授の光岡知足先生が提唱され、「免疫賦活、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用、抗腫瘍効果、抗血栓・造血作用などの生体調節、生体防御、疾病予防・回復、老化制御等に働く食品成分」と定義されています。EF-2001乳酸菌の場合は、加熱処理したもので、いわゆる死菌です。しかし、体に直接作用して腸内も環境を整える働きがあります。

腸まで届くEF-2001乳酸菌実験結果にびっくり!?

澤登:ところで、EF-2001乳酸菌はどのように開発されたのですか?

只野:25年ほど前に日本ベルム社が発見した乳酸菌で、正式には「エンテロコッカス・フェカリス・EF-2001株」といいます。菌のかたちは、丸っぽいものや棒状のものなどいろいろありますが、この菌は球菌と呼ばれる種類です。球菌は、食中毒を引き起こす黄色ブドウ球菌や、肺炎や咽頭炎を引き起こすレンサ球菌に代表されるように、毒性があるといわれていました。ところが、エンテロコッカス・フェカリスは乳酸を出すれっきとした乳酸菌です。研究チームは、「ひょっとしたら、この菌は何か可能性を秘めているかもしれない」と考えたそうです。ただ、球菌にはマイナスイメージが強い。だったら殺菌したもので実験しようということになりマウスを使って死菌で実験したところ、予想どおりよい結果が得られたそうです。研究チームはさらに実験を重ね、エンテロコッカス・フェカリスEF-2001を加熱処理して有効成分だけ取りだしたEF-2001乳酸菌の加熱処理菌体が誕生したというわけです。

澤登:そして、只野先生も8年前から研究に関わるようになったのですね。最初はどのような研究に取り組まれたのでしょうか?

只野:便秘の改善作用があるかどうかをマウスで実験しました。

澤登:結果はいかがでしたか?

只野:改善しました。さらに実験を重ねたところ、潰瘍性大腸炎の改善も望めそうだとわかり、3年前には免疫力が上がるか試してみたんです。小腸には、免疫力に関わるリンパ球という細胞が集まっている場所があります。スイス人医師のパイエルさんが発見したので、この部分をパイエル板と呼んでいますが、EF-2001乳酸菌は胃酸で分解されず、ちゃんと小腸まで届き、マウスのパイエル板から吸収されて免疫力が上がりました。

澤登:どのくらいの期間食べさせたのですか?

只野:5日間です。非常に驚いたのは、免疫力が上がる一方で、炎症性サイトカイン(炎症を悪化させる物質)は下がりました。澤登先生も先ほどおっしゃったとおり、免疫力は高ければよいというものではなく、体内に備わっている免疫機構全体のバランスが重要です。そのバランスが保たれた状態で、腸内環境も整えられるということを見つけて以来、EF-2001乳酸菌にすっかりはまってしまいました(笑)。

腸内環境は認知症にも影響する可能性が……

只野:じつは、腸内環境を整えることで、認知症の予防や改善につながるのではないかと考え、3年前から、その実験も行っています。実験では、認知症のマウスに対してEF-2001乳酸菌を与えたグループと、与えないグループの様子を観察しました。EF-2001乳酸菌を食べたマウスは、推測どおり認知症の症状が改善されました。ひとでも効果があることを期待しながら、現在、さらに実験を進めています。

澤登:腸と脳はつながっていますからね。

只野:ええ。うつや不安障害などの症状が出れば、そのうちの1割のひとが潰瘍性大腸炎になるなど消化器の病気が起こることがわかっています。逆に、潰瘍性大腸炎や過敏性大腸炎になると、うつや不安障害を併発しやすい。その確率は9割といわれています。澤登先生のところに認知症の方は?

澤登:みえないですね。しかし、精神面で不調のある方は非常に多く、そういう方には必ず乳酸菌を使います。

只野:どのくらいの量を?

澤登:体重や症状、検査結果にもよりますが、たとえば、癌で精神的に不安定な状態になり、うつ傾向がある場合は、最低でも1日3包です。患者さんのなかには、4包、5包と飲んでいらっしゃる方もいます。「そんなに飲んで大丈夫ですか?」と心配される方もいらっしゃいますが、安全性試験が行われている製品ですから、それに関しては問題ありません。

只野:私がいっしょに研究を行っているアレルギークリニックの先生は、血糖値を下げたいといって、EF-2001乳酸菌が1包に1兆個入っているものを毎日飲んでいますが、多いときで25包も飲んでいますね。乳酸菌の個数でいうと25兆個くらい。この先生は一緒に摂っているパントテン酸とオリゴ糖もプラスにはたらいていると考え、ご自分のクリニックでアレルギーの治療に役立てています。

腸内環境が整うとがん治療の副作用が軽くなる

只野:ところで、澤登先生はどうして乳酸菌を治療に使うようになったのですか?

澤登:健康維持や病気の改善には、「栄養」が基本となるからです。食べたものがしっかりと消化吸収されて栄養となり、不要なものがスムーズに排泄されるためには、胃腸のはたらきが重要です。海外の統合医療の学会に出席すると、テーマのほとんどは腸に関係するもので、10年以上も前から関心が集まっていました。さまざまな新しい知見から、乳酸菌に注目しました。只野先生は、EF-2001乳酸菌を癌治療に応用できないか研究されているそうですね。

只野:はい、癌にかかっているマウスを使って行っています。あえて抗癌剤の効果が出ない量とEF-2001乳酸菌を一緒に使うと、癌の縮小効果が高まり、死亡率も下がりました。この結果が必ずしもひとに適応されるわけではありませんが、実験を続けています。澤登先生は、癌の患者さんに勧めていらっしゃるのですか?

澤登:ええ、腸内環境を整える目的で使っています。抗癌剤(化学療法剤)や放射線療法を受けている方のケースでは、副作用が軽減され、QOL(生活の質)が上がります。多くの抗癌剤は分裂が盛んな細胞に効くようにできている。人間の正常な細胞の中で分裂がもっとも盛んなのは腸の粘膜なので、抗癌剤を投与により、当然、ダメージを受けます。それを少しでも軽減するために、乳酸菌で腸内環境をよくしてあげる。結果として、癌に対抗する力も高まります。化学療法のサポートに乳酸菌は必須だと思っています。

只野:副作用が軽ければ、食欲も出てくるでしょうね。

澤登:食欲や吸収力の低下、下痢や便秘などの症状が軽くなり、栄養がとれて体力がある程度維持できれば、次の抗癌剤治療を延期したり、投与量を減らしたりすることなく治療を継続できます。白血病など血液癌の専門医として総合病院で治療にあたってきた経験からいうと、栄養状態が治療効果に大きく影響します。そのため、乳酸菌により腸内環境をできるだけ良い状態に保つことは、本当に大切だと思っています。でも、乳酸菌は保険診療の対象外です。それがとても残念ですね。

料理にもEF-2001乳酸菌みそ汁、煮もののうま味アップ

只野:乳酸菌が健康によいかもしれないといわれるようになって100年ほどたちましたが、研究が進むほど、可能性が広がっている感じがしますね。

澤登:腸は脳だけでなく、肝臓とも強い関係にあります。腸肝循環と言われるサイクルがあり、ビタミンD、B6、B12などの効率的な利用に役立っていますが、当然、腸の機能が悪いと、その影響は肝臓にもおよびます。たとえば、お酒を飲まないのにγGDPだけ高い人は、腸の環境をよくすると、数値が下がることがあります。

只野:私は69歳ですが、毎晩、赤ワインをボトル3分の2くらい飲んでいます。それでも講演会で毎日のように全国各地を飛び回れる。こうして元気なのも、EF-2001乳酸菌を毎日飲んでいる成果かもしれませんね。

澤登:赤ワイン3分の2というのは、ちょっと飲みすぎですねえ(笑)。ところで、只野先生の次の研究テーマは?

只野:じつはEF-2001乳酸菌はみそ汁など料理に使うと、うま味がぐんと増すのですね。

只野:この特徴を生かして、石川県の伝統野菜である「加賀野菜」と組み合わせた調理法を考案中です。たとえば金時草と組合せると、血糖値がぐんと下がります。いろいろな食材と組み合わせて、乳酸菌シリーズを作りたいですね。

澤登:食卓に、しょう油や塩といっしょに乳酸菌を置く(笑)。

只野:ええ、乳酸菌は安全なうえに、手っ取り早く腸内環境を整えられますから、私の家では実際にそうしています。

澤登:私は、只野先生が出してくださった結果を臨床で証明することを目標のひとつに掲げたいですね。